「L、あの、もうちょっとこっちに、来ない?」
同じベットに寝ているのに、なぜかさすがに落ちるだろうと思うぐらいぎりぎりまで端に居るLに、ユイは声をかけた。
Lは半回転してユイと向き合う。ベットで寝る時も、椅子に座っている時のあの独特な座り方をほとんど維持しているのだから不思議だ。
ワタリさんに聞いてみたら、一度熟睡すればその体系は崩れていくらしいのだが、いかんせん、普段は熟睡できるような眠り方をしていない。
付き合い始めてもう半年。一緒に寝るようになって2か月。他のカップルとはずれた付き合い方だけれど、この寝方で2か月というのは、もうなんか違う気がする。
「いえ、このままでいいです」
「でも落ちるよ」
「落ちてもいいです」
「え、いいの?」
「いいんです」
いや、でも眠れないでしょ。本当に。
なんでそんなに意地になってるの?
口に出さずに、じっとLを見つめてみた。Lもじっと見つめてくる。が。
「照れます」
「無表情で言わないでよ」
シリアスかもしれない雰囲気ぶち壊し。わかってやっているんだろうけど。
しょうがないので、Lを引っ張ってみる。力を出してみても、あんまり動かない。
「ユイ、私を動かさないでください」
「だから、なぜ?」
「寝たいんでしょう」
そりゃあ、まあ、そうだけど。Lが近くにいた方が安心するんだけどな。
そう言うと、Lは優しく少しだけ笑った。
でも寄って来ない。
「私たち、一応恋人同士だよね」
「一応じゃないですけど、そうです」
「くっついて寝るのも、ありじゃない?」
するとLは急に押し黙る。視線も布団の中に向いていて、私はそれが気に食わなかった。
「ねえ、L?」
「いいんですか」
「えっ?」
顔を上げたLの瞳は爛々と輝いて見えた。見たことのない目だ。
怖くなって、思わず一回目を逸らした。
「目をそらさないでください」
「いや、うん。今ので何が言いたいのかはわかった」
「そうですか」
「で。いいんですか、本当に」
そんな、我慢の限界です、みたいな目をされても。
ああ、でも無言の訴えなら何度かあったか。それをかわしてきたのも私。そりゃあ、かなり躊躇いというか「襲われる!」って逃げて来たけど、その影響がここに出てきていたとは!
「……………うん。いいよ」
この年になって、初めてだけど。
そういう間もなく、口をふさがれる。いつもとは違うディープ・キス。
しびれるような、感覚が麻痺していくような、Lのキスにはそんな器用さがあって、もう為されるがままだ。
「ふっ………ん、エル?」
Lに声をかけると、嬉しそうに少し妖美に笑って、彼は言った。
「ずっと、待っていました」
Lの手が器用に私の服を脱がせていく。Lの服も脱がせようと思ったけれど、なんでTシャツなんだ。脱がしにくい。
もうためらわずに触れてくる不器用な手が気持ちよかった。
Lの顔が近い。
「ユイ」
「ん?」
「Est-ce que vous savez que cette nuit dure jusqu'a demain matin?」