強さの理由は



 一瞬ロックオンの目の前で何かがぶれた。

「なっ!」
「ロックオン!」

ロックオンは足をひっかけられて、あおむけに倒れる。その速さに追いつけず、受け身すら満足に取れないまま、衝撃が体を襲って一瞬息が詰まった。すぐに刹那がロックオンの上に来ているのが見えた。お互いの顔の間が30センチくらいの近さで、喉もとにナイフを突きつけられる。 アレルヤがあわてて声を出すと、刹那はそれに反応して持っていたナイフに少し力を入れてきた。薄く血がにじむ。スメラギが慌てて止めに入ろうとしたのをロックオンは視界端でそれを見て、

「慌てるなよ、大丈夫だ」

とは言うものの、刹那のナイフはいつでもロックオンを殺せる位置にあった。冷汗が流れる。

「ロックオン・ストラトス」
「な、んだ?」

 刹那がこの戦場で一番冷静だった。半ばただの傍観者と化した三人も、どうやらさっきから混乱していて何もできないようだった。
 静まり返っている部屋の中で、刹那の声が耳に響く。
 瞳に冷たい光がちらちらと見える。無表情の顔をそれは一段とひき立たせた。いつでも躊躇なく人を殺せる目だ。

「俺は確かに子供だ。………油断もするだろう。だが、それでは負ける」