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 世の中に心を乱すほどの絶望があるなどと、本当は信じたくなかった。



 全てが上手くいく世界があるなんて、もとから信じてはいない。
 テレビから流れるニュース、終わらない戦争。人の死一つをとっても、そこには限りないエピソードが隠されている。
 それはとても遠いところで知らないうちに進展していくものだったから、私は他人事で何も感じずに生きてきた。
 だってそれは、今に始まったことではないのだ。悲劇には必ず原因があるし、それを力で終わらせようするほど、泥沼にはまっていくほかない。

 誰にだってその固く結びついた過去と現在を解くことなどできない。どんな天才にも。そしてどんな犯罪者だって、今を覆すことはできはしないだろう。
 世界を動かそうなどと言うのは、愚かな行いだと私は思う。一度その道に踏み込めば、そうやすやすと戻ってはこれないし、なんらかの形で報いを受けることだろう。



 そこで私は自分自身に問わなくてはいけないことがある。
 自分がしたことが、なんらかの形で私に帰ってくるとしたならば、今までの短い人生の中で、私は何か重要な間違いを犯しただろうか?
 少なくとも、まったく見知らぬ日本の地を呆気にとられて眺めまわし、帰る場所がないなどと叫びたくなるくらいの――――それほど罪深いことを、私は一度でもしたのだろうか?



 …………たとえさっきまで自殺を考えていたとしても、私はこの事態には思わず嘆きたくなった。